食道と食生活のはなし
喉の違和感
食道の症状というと「胸焼け」や「胸のつかえ感」が代表的ですが、意外に多いのが「喉の違和感」です。最近、「喉の違和感」などを感じて耳鼻咽喉科を受診する方の中に、食道への胃酸の逆流が原因の方が多くいることが指摘されています。また、この食道への胃酸の逆流が「咳」や「肺炎」の原因になることもあります。
以前は日本の食事は、お米を中心に魚、肉、野菜、さらには果物などをバランス良く食べていました。しかし、最近では脂肪を多くとるいわゆる食生活の欧米化がすすんできました。これらの食生活の変化にともない高血圧、脂質異常症、高血糖などのメタボリックシンドロームに陥る日本人が増加していることは皆さんもよくご存知だと思います。このような生活スタイルの変化は食べ物が直接に入り通っていく食道にも影響を与えています。前回(4月15日)の胃の症状に続き、今回は同様に増えている食道の症状と食事のお話です。
食道と食事の関係
食道の症状は胃液や食べた後の胃内容物の食道への逆流が主な原因といわれています。症状のある人は食道への胃内容物の逆流を起こしやすくする食事を控えるなどの食生活上の注意が必要になってきます。
1. 食事習慣
1度に大量の食事を取ると、胃酸分泌が増えることがわかっています。また、食後3時間は食道出口付近(下部食道)の筋肉がゆるむため胃からの逆流が起こりやすくなります。したがって食べすぎ、飲み過ぎを控えること、そして食後すぐに横になったり、就寝前に食事をすることを避けることが重要になってきます。また、食事直後の運動も胃食道逆流を増加させるので注意が必要です。
2. 食事内容
高脂肪食、高蛋白食は胃酸分泌を刺激するため控えることが必要です。
3. しこう品
アルコール
アルコールの主成分であるエタノールは食道の筋肉をゆるませ胃内容物の逆流を引き起こします。またエタノールは量が増えると食道の運動も低下させます。
カフェイン
カフェインは強力な胃散分泌の刺激物質であり、お茶やコーヒーの摂取により胃酸分泌が亢進します。また、カフェインは食道の筋肉をゆるませ胃内容物の逆流を引き起こします。カファインレスのコーヒーでも同様の事が起こることからコーヒーの場合はカフェイン以外の成分も胃酸分泌に影響を与えていると考えられています。
その他
オレンジやレモンなどの柑橘類、トマトや大根などの野菜、胡椒、からし、わさびなどの香辛料、大豆や小豆などの穀類も胃内容物の食道への逆流を増加させます。また、糖質は胃からの食べ物の排出を遅らせ、食道への逆流を増加させます。日本固有の食べ物であるもち、まんじゅう、焼き芋などは糖質を多く含むので注意が必要です。
暴飲暴食や偏った食事は、症状出現の原因になります。メタボリックシンドロームなどと同じように、日頃から食事のバランスに気をつけることが大切です。今回も前回に引き続き、自宅ですぐに実践できる食道の症状と食事との関係を紹介しました。胃酸により食道が荒れてしまうと薬を飲む必要がでてきます。症状が続く方や気になる方は早めにかかりつけ医の先生に相談していただき、一度は胃カメラ検査を受けることをおすすめします。